憂太

music&poetry is life 

彼の素晴らしい作品を紹介します。

              タイトル 

    底のない真夜中 蝉の声 時々僕は…… 吐き溜め

    ハミングバード パリサイの住民 ヒーリング・フィーリング 

      WHITE IN SUMMER

  

  

 

                     底のない真夜中

              降りだした雨は止みそうになく
              君のお気に入りの緑のオウムが
              鋭い嘴で 羽根を毟るのを止めない

              底のない真夜中 狂ったピエロがそれを見ている

              朝の期待を感じられずに
              美しい女が自分の身体を
              冷たいナイフで 傷つけるのを止めない

              底のない真夜中 狂ったピエロがそれを見ている  

                                              タイトルへ

 

 

                      蝉の声

                  被虐待児の情緒
                  犯された女 殺された男
                  荷台に山積みの死体
                  乖離したシニフィアン
                  白日に晒されている秘密
                  確かに交わして思い出せない約束
                  アスファルトに死骸
                  干からびたアブラ蝉

                  みぃーんみぃーん 鳴き声が
                  やけにしつこくまとわりついて
                  みぃーんみぃーんって泣いてます

                                            タイトルへ

 

 

                     時々僕は……

          時々僕は夢にうなされる そこには多分箱の中にいるはずの
          僕の知らない僕がいる フォルマリンづけのシャム双生児が
          死人の目で僕を見ている
          時々僕はそんな叫びで目を覚ます 僕は僕の知らない僕を
          箱の中に収めようとする だけど叫びは残ってて
          時々僕は祈りたくなる

          時々僕は夢にうなされる そこには多分箱の中にいるはずの
          僕の知らない僕がいる 突然狂ったサーカスの象が
          僕を踏み潰そうとしている
          時々僕はそんな悲鳴で目を覚ます 僕は僕の知らない僕を
          箱の中に収めようとする だけど悲鳴は残ってて
          時々僕は祈りたくなる

                                       
タイトルへ

 

 

 
                        吐き溜め

              幸福なパレードのためには捌け口がいる
              日のあたらない場所に捌け口をつくる
              捌け口があれば吐き溜めができる
              そこは 吐き溜め

              吐き溜めは剥き出しのコンクリート
              夜と灰色に溶け合う
              そこに迷い込んだ一羽の極楽鳥
              鮮やかな羽根を震わせて
              琥珀色の音が響く
              極楽鳥は数ヵ月後に
              誰も連れて行くこと無く
              吐き溜めで餓死した

              幸福なパレードのためには捌け口がいる
              風の吹かない場所に捌け口をつくる
              目を逸らして 無かったことにして
              そこは吐き溜め                 
タイトルへ

                                    

                   ハミングバード

               季節は何時も横顔のまま
               僕を残して過ぎていった
               理想は何時も壁にもたれて
               虚空の埃と夢を見ていた

               それでも真冬の南風に吹かれる日には
               ハミングバードが軽やかに歌ってくれる

               希望は何時も微笑むことなく
               誰かの溜め息とすり替わっていた
               想いは何時も立ち止まったまま
               背中をそっと押して欲しくて

                                       タイトルへ

 

 

                    パリサイの住民

                  他罰的な嘆きとか
                  自虐的な笑いとか
                  警戒の無関心とか
                  抑圧の無表情とか
                  それだけじゃないって思うけど……
                  パリサイの住民だから
                  偽ることには慣れている
                  埋もれることでなくした顔を
                  探す夜もあるけど……

                                       タイトルへ

                 

 


                   ヒーリング・フィーリング

               取り残された夜が明けようとしている
               僕は朝露に濡れる草原を抜けて海辺に向かう
               素肌に感じるそよ風に両手を広げてみたりしながら
               砂浜に着くと絶え間なく寄せては返す波
               バイオリズムが調和して癒される朝

 

                                        タイトルへ

 

 

 

                 WHITE IN SUMMER

             森からの風はもう誘わなくなったらしい
             鳴り止まなかったはずの音楽は止み
             小鳥達だって歌いやしないし
             色鮮やかな花さえ枯れてしまったよ

              ホワイトインサマー真夏の白い光
              ホワイトインサマー愛し合えたら
              ホワイトインサマー雪の白さで
              ホワイトインサマー許し合えたら

             水晶の光はもう永遠を映さないらしい
             ビーズの首飾りの声は届かずちぎれ
             子供達だって灰色の瞳で
             夕暮れの教会の鐘さえ響きはしないよ
 
              ホワイトインサマー真夏の白い光
              ホワイトインサマー愛し合えたら
              ホワイトインサマーせめて痛みを
              ホワイトインサマー羽根に飛ばして

                                             タイトルへ