―殊能将之―(しゅのうまさゆき、1964〜)


 ミステリ作家さん。シリアル・キラーを主人公に据えた『ハサミ男』でメフィスト賞受賞、デビュー。以後常に話題を呼ぶ作品を輩出する、新鋭の作家。特に『黒い仏』は賛否両論の問題作として、記憶に新しい。近刊に、『キマイラの新しい城』(講談社ノベルス)。


 この人はとにかく読者の期待に答える、否
裏切ることに全力を注いでいるような(笑)
 『黒い仏』といい『鏡の中の日曜日』といい、あまりミステリに馴染みの無い人にはお勧めできない作品が多い。でも、つぼに入ったら面白い人です。あと、僕は良く分からないのですが、本の随所で遊びが入っているようです。分かる人だけが楽しめる部分もあるとかで。僕は全然分かりませんでした。
 批評家タイプの作家さん、と一部で評されているように、非常に理知的な文章を書く人です。

 ちなみに、本人さんのサイトはこちら。 mercy snow offcial homepage


ハサミ男 講談社   “ チョキ、チョキ、チョキとハサミ男が行く。 ”


 デビュー作。主人公はサイコ・キラー。通称“ハサミ男”。女子高生を、ハサミを突立てて殺していく。だがある日、自分の手口を真似た犯行が。模倣したのは、誰?
 無論ただのスリラーではなく、そこはミステリ、最後にはとんでもないどんでん返しが待っています。正直、
やられた、と思いました。ただ、個人的にはやや小説として読みにくかったというのが。僕だけかもしれませんが、例えば黒い仏のようなのめり込み方にはなりませんでした。
 今度映画化するようです。ただし、ミステリではなく、普通の物語として構成されているようなので、ミステリとして楽しみたい方は、先に本書を読んでおかないと、ネタバレされますよー。

美濃牛 講談社 えへ。

黒い仏 講談社 “ わたくしの役目は、本を閉じるにも、劇場を去るにも、
      もはや遅すぎると、皆様にお伝えすることです。 



 ――賛否両論、前代未聞、超絶技巧の問題作。
 と裏表紙には書いてあるますが。その通りです。読み手を極端に選ぶ本。事実、僕の友人は読後この本を
床に叩き付けたとか(笑)
 僕個人は大好きですが、これはあえて勧めません。もし読む場合には、少なくとも、普通のミステリを10冊ほどお読みになってから、読むことを勧めます。驚きも格別でしょう。

キマイラの新しい城 講談社 “ 「エドガー様、マンスーラで何があったかを教えてください」 ”


 750年前十字軍に参戦した騎士の亡霊が、現代のテーマパーク社長にとりついた!? 自らの死の謎を解き明かしてほしい――亡霊に依頼された探偵石動戯作は、果たして750年前の密室の謎を暴くことが出来るのか?
 750年前に密室で刃で貫かれたという過去の謎。そして呼応するように起こる現代の密室殺人。その真相は何か? というのがミステリ的な部分ですが、この本はミステリと期待して読むと肩透かしを食うでしょう。むしろ、
750年前の騎士から見た現代、という部分に爆笑するのが正しい読み方かなと。バイクを馬、六本木ヒルズを尖塔。なるほど、過去の人間から見れば現代はチンプンカンプンの世界なんだなあと思います。
 密室の謎は……ねえ。
 なお、僕も良く分からないのですが、先に『鏡の前の日曜日』(講談社)を読んでおくといいみたいです。ネタバレがあるとかないとか。




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